KEKB 個別バンチフィードバックデザインprivateメモ (Japanese)
1997年10月9日で改訂版になりました。ご意見、ご質問は
Makoto Tobiyamaまで。
Contents...
1.真空チェンバー
2.テーパーでのRFロス
3.ボタン電極
4.進行方向位置検出
5.横方向位置検出
6.アナログDC補正
7.Two Tap FIR Filter
8.Memory Board
9.信号変調回路
10.バンチ結合不安定の推定
11.フィードバックの利得、最大抑制振幅
12.広帯域大出力増幅器
13.進行方向キッカー
14.横方向キッカー
15.バンチ電流モニター
16.コントロール
17.AR大電流実験
18.KEKBへの配置
KEKBの真空チェンバーの大きさは、以下の通りとなっています。
| | LER | HER
|
|---|
| ARC | φ94mm 円形 | 104 x 50mm 25mm arcのレーストラック
真空チェンバーのサイズ。
|
|---|
フィードバックシステムで用いる振動検出チェンバーは、円形導波管を伝わる電磁波の影響を避けるため、上記の物より内径を小さくして、φ64mmとしました。円形導波管を伝わる電磁波のカットオフ周波数は以下の式で計算出来ます。
Jn'(kca) = 0
ここで、k=2πf/c、aはチェンバーの半径です。TE11姿態が最低のカットオフ周波数となります。その他のモードの周波数は、以下の表から計算できます。
| m | n
|
|---|
| 0 | 1 | 2 | 3
|
|---|
| 1 | 3.882 | 1.841 | 3.054 | 4.201
|
|---|
| 2 | 7.016 | 5.331 | 6.706 | 8.015
|
|---|
| 3 | 10.173 | 8.536 | 9.969 | 11.346
|
|---|
| 4 | 13.324 | 11.706 | 13.170 | 14.580
TEnmモードに対応する根の値
|
|---|
TMモードに対しても同様な計算が出来、TM01がTMモードでは一番低いが、TE11よりは高いということが分かります。
| m | n
|
|---|
| 0 | 1 | 2 | 3
|
|---|
| 1 | 2.405 | 3.832 | 5.136 | 6.380
|
|---|
| 2 | 5.520 | 7.016 | 8.417 | 9.761
|
|---|
| 3 | 8.654 | 10.173 | 11.620 | 13.015
|
|---|
| 4 | 11.792 | 13.323 | 14.796 | 16.200
TMnmモードに対応する根の値
|
|---|
マイクロ波は、カットオフ周波数より低くても、減衰しながらある程度導波管内に侵入していきます。このときの電場の強さは、次の式のΔz進む毎に1/eとなります。
Δz=λc/(2πsqrt(1-(λc/λ)2))
KEKBでの例
φ94mmのチェンバーのTE11モードに対するカットオフ周波数は
1.841/(94x10-3/2)*c/2π=1.869GHz
となります。フィードバックモニターに使用するφ64mmのchamberでは、TE11モードのカットオフ周波数は
1.841/(64x10-3/2)*c/2π=2.745GHz
となります。このとき、2.544GHz成分の侵入長(電場が1/eとなる長さ)は、λc=0.1092m、λ=0.1178mより
Δz=0.1092/(2π sqrt(1-(0.1092/0.1178)2))=46.3mm
となります。
HER用の真空チェンバーはレーストラック型であり、正確なカットオフの計算はMAFIAを使って出すのが簡単です。結果は、次表の通りとなりました。
| 周波数
|
| 1 | 1.602 GHz
|
| 2 | 3.131 GHz
|
| 3 | 3.153 GHz
|
| 4 | 3.381 GHz
|
| 5 | 3.778 GHz
|
| 6 | 4.321 GHz
|
| 7 | 4.537 GHz
|
| 8 | 4.842 GHz
|
LER用の位置検出チェンバーは、下図のようになっています。

HER用は、

テーパー部から電極まで最低200mmとれば、TE11モードのしみ込みは、約1%以下となります。
モニター部やキッカー部では、その周りの真空チェンバーとは口径や断面を変えなければならないことが多くあります。ビームは環境の変化を感じて、電磁波(高周波)を放出し、エネルギーを失うことになります。この放出されたエネルギーが大きいと、リング全体のインピーダンスを大きくし、ビーム品質を劣化させるのみならず、口径変化部で発熱を起こしたり、放出された電磁波が蓄積されるとビーム不安定のもととなる可能性もあり、とてもよくありません。このため、変化を出来るだけ緩やかにすることと(目標のlongitudinal loss factorは0.1V/pc程度)、出来るだけ袋構造は作らないということを常に考えておく必要があります。
LERのモニター部では、φ94からφ64まで円形から円形への変換を行うことになります。ABCIを使い、テーパーの長さをパラメーターにloss factorを計算した結果を次に示します。構成は、両端φ94からテーパーでφ64まで絞り、その後同じテーパーでφ94に戻す形で、全体のlossを計算しています。(片側だと半分)。

これから、テーパー長を30cmとると、loss factorとしては0.06V/pc程度、発熱量自身は2.6A full current/full bunchで800W程度となります。発熱については、別段このテーパー部で発熱するという訳ではなく、多分φ94側の壁にそってなくなるのがほとんどです。
HERのモニター部については、レーストラックからφ64の円形チェンバーまで絞らなければなりません。ABCIは今のところ軸対称構造しか計算できないので、正確な値はMAFIAを使い3次元計算をして求める必要があります。しかしながらとても大変ですからover estimateではありますが、φ104(レーストラックの広い部分)からφ64へ絞る構成について、LERの場合と同様にloss factorを計算しました。
これから、LERと同様に30cmのテーパーをとると、loss factorとしてtotalで0.1V/pc程度を期待できそうです。実際にはvertical方向はほとんど変化しないので、loss factorはもっと小さな値となるでしょう。
LERの横方向キッカー部は、外部導体部の内径をφ94としているので、ストリップライン構造以外の段差はありません。HERについては、レーストラックの長辺に合わせてφ104の円形チェンバーとします。この場合、狭い方(r=25mm)から半径52mmまで広げるloss factorを計算すると、

のようになり、テーパーとして40cmあれば、両端でlossが0.145V/pc程度で許容範囲となります。(実際には横方向は変化しないので、loss factorはもっと小さくなる。)
LER、HERともlongitudinal kicker部分の真空チェンバーの内径は110mmです。ここも変換が必要となりますが、上記と同じ様な条件で設計します。最終的な真空チェンバーの構造図を以下に示します。
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電極は、SMAタイプのものを使用します。LER、HERとも、2箇所にそれぞれ20個づつのSMA型電極を用意します。SMA型フィードスルーの構造図を以下に示します。

SMA型電極は、細部や材質を除いて衝突点モニターに使用するものと同じものにしました。詳細については、こちらを参照して下さい。ビームに対する応答(出力)を、MAFIAのT3コードを使い計算したものについては、以下を参照して下さい。
リンギングも少なく、きわめて素直な時間応答を示していると思われます。
7/Oct/97
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進行方向のバンチ位置(重心)は、バンチの持つRF周波数の数逓倍信号成分を位相検波する事により求めます。バンチの持つnfRF成分は、下図に示すような、power splitterとdelay cableを組み合わせたアナログFIRフィルターで取り出します。
この図だとボタン電極からの信号をpower splitterで3分配し(同相)、必要な波長(λ)分delay cableで信号を遅延させ再び合成しています。得られる信号は、bpmの信号がV(t)だとすると
V(t)+V(t+λ/c')+V(t+2λ/c')
となり、周波数成分c/λをもつ3パルストレインとなります。
この信号(Asin(nωRFt+Φsin(ωst)))と、RFのn逓倍信号(cos(nωRF))をDBMを用いてかけ算すると、
Asin(nωRFt+Φsin(ωst))×cos(nωRF)
=1/2A(sin(2nωRFt+Φsin(ωst)) ・・・高周波成分
+ sin(Φsin(ωst)) ) ・・・synchrotron成分
これを、Low pass filter (LPF)を用いて低い成分のみ取り出し、かつシンクロトロン振動の振幅があまり大きくないとすると、結果は
Φsin(ωst))
という、バンチ重心位置となります。下図に実際の検出装置のブロック図を示します。
7/Oct/97
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横方向位置検出については、歴史的にはAM/PM法をターゲットに開発を進めてきましたが、以下の様な問題点を解決するのは必ずしも容易ではありません。
- 出力の前後に鋭いパルスが出る。
- 出力パルス幅が短く、一定領域も少ない。
- バンチ電流の2乗依存性を消すため入れるLimiting amplifierが悪辣。
- 調整がおおごと。
これに対して、パルストレインを180度Hybridで引き算し、それを同期検波すれば、上記の問題に対して
- 安定した幅広パルスが出る。
- バンチ電流にlinerな出力だから、あえて悪辣なlimiterを入れる必要はない。
といった利点があるので、最終的にはこちらを採用し開発を進めています。但し、次のような欠点があることを忘れてはなりません。
- シンクロトロン振動の影響を受けうる。但し、cos×cosの関係なので、よほど大振幅でなければさほどの影響は無いはずです。実際には、AR大電流実験時は巨大なシンクロトロン振動が起き、大きく影響されてしまいました。KEKB本番では、現在の目論見では少なくともシンクロトロン振動は起きない/feedbackで制御出来る-と思っているので、大丈夫なはずですが。
- Hybrid入力前で位相を極めて厳密に合わせておく必要があります。同軸の(きわめて高価な)phase shifterが必須です。
- 中間増幅がないので、出力はAM/PMと比べて低くなります。これは逆に、S/Nは悪くならないことでもあります。
実際の回路のブロック図を下に示します。
7/Oct/97
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フィードバックシステムやバンチ電流検出システムのADCのダイナミックレンジは8ビットしかありません。フィードバックシステムが押さえ込む最小振幅はADCの最小ビットによりほぼ決まる(実際にはフィードバックシステムのノイズ特性より、この1ビットより小さな値となることもある)ので、ADCの前に出来るだけ位置情報を増幅しておきたいのですが、そうすると、CODやビームローディングの変化により平衡位置がずれ、ADCのdynamic rangeをはずれてしまう可能性が大きくなります。
進行方向については、ビームローディングの変化から、バンチトレインの先頭と後尾の平衡位相は異なります。しかしながら、ARES空洞やSCC空洞を使用した場合は、予想されるずれはそれほど大きくないので、この進行方向位置については後述のtwo tap FIR フィルターで除去できると思われます。これに対してRF電圧を変える、RF周波数を変えるといった作業はビームの平衡位相をきわめて大きく変えてしまい、進行方向位置検出はもとより、横方向位置検出信号およびバンチ電流検出信号も容易にdynamic range外に出てしまうと予想されています。AR大電流実験時は、この問題に対して人間を埋め殺しにして、変化があり次第マニュアルで補正していましたが、KEKBではさすがにこれではダメです。
このため、RFの位相のDC成分を検出し、進行方向検出器の位相および横方向位置検出器、バンチ電流検出器の位相にフィードバックする、遅いアナログDC補正装置が必要となります。単純には進行方向位置検出器の出力を低域濾波器を通して、DC成分をphase shifterに戻せばいいのですが、実際にはDBMのDCオフセット、漏れの問題があり、特にバンチ数が少ない場合きわめて容易でありません。そこで、進行方向位置検出器の出力をsample/holdでバンチがあるあたりのみ取り出し、その後LPFを通してDC成分を検出し、フィードバックする回路を制作中です。最終段のLPFの周波数はシンクロトロン成分より十分遅い必要がありますが、電源周波数より早いほうが良いかどうかについてはまだ分かりません。実際のビームを使って(KEKBが立ち上がった後)決定する予定です。回路図については、こちらを参照して下さい。
横方向については、基本的にはモニター位置でのCODを出来るだけ小さくするよう努力することが必要ですが、それでもバンプの漏れとか、意図的なバンプ攻撃でCODがずれてしまい、やはりADCのダイナミックレンジからはずれてしまう可能性があります。これの補正は、進行方向と同様にsample/holdを使った方式で補正します。回路図については、こちらを参照して下さい。
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本フィードバックシステムは、進行方向、横方向いずれもバンチの重心位置を検出し、運動量の差をバンチに戻します。このため、
- バンチ毎の位置を検出(sample)
- 位相を90度ずらす、あるいは今までの位置データから位相が90度ずれた値を計算する(phase shift)
- 同じバンチがキッカーのところに戻ってくるまでdataを遅延させ(delay)
- バンチをけっ飛ばす(kick)
といったシステムとなります。このうち、2と3の部分を、ちょー高速ディジタルフィルタを用いてdownsampingなしに行います。後述するように、広帯域増幅器のパワーは、特に進行方向については極めて高価ですから、このフィルタを用いて、出来るだけ不要な成分は除去したいと思います。不要な成分の代表は、バンチ重心のDC的な位置です。進行方向については、ビームローディングの差によるバンチ毎の位相差、バンチ電流による差が生じます。横方向については、バンチ毎のCODの差が生じることはなかなかありそうにありませんが。また、目標とする周波数(シンクロトロン振動、ベータトロン振動)以外の成分も、出来ることなら落としておきたいと思います。
今までのビーム観測によると、普通の振動をしている場合、振動成分以外の寄与はDC的なものを除けば無視できるほど小さいことが分かっています。大振幅かつ内部運動も加わった振動をしている場合は、所詮このフィードバック系ではどうにもならないので、ノイズ除去のに血道を上げる必要はあまりないといえます。
進行方向(シンクロトロン振動)
シンクロトロン振動は、bunchのrevolutionに比べて十分遅い。KEKBではνsは0.01〜0.02と、1 synchrotron振動周期に最長100周もかかる予定です。シンクロトロン振動周期の90度前のデータから270度前のデータを引き算すると、下図の様に、90度の移相と、バンチ毎のDC成分の除去が同時に出来ます。
このフィルターの周波数応答関数は、DCで0、synchrotron周波数fsで1、2fsで0、3fsで1、・・といった、周期関数となります。この様にタップが2つしかなく、応答が有限なフィルターを2 tap FIRフィルタ(peak gain mode)といいます。どちらのタップの係数も1なので、浮動小数点のかけ算が不要となり、単なる引き算器(〜加算器)だけでこのフィルターが構成できます。そこで、このフィルターを全部ハードウエアで構成することとしました。下にそのブロック図を示します。
- Flash ADC
- 508MSPSで動作するADC。現在MAXIM社のMAX101とSONYのCX1276K(及びその互換の石)等がある。CX1276Kは経験上600MHz程度までは動くらしいが、アナログ帯域が狭く(〜340MHz程度?)、本システムのようなパルスを計測する用途には些か荷が重い。MAX101はTKAD10Cと大変良く似ており、アナログ帯域はカタログスペックで1.1GHzまである。出力は2チャンネルインターリーブ、ECLシングルエンド。本システムにはMAX101が適している。
- Fast Data Demultiplexer(FDMUX)とFast Data Multiplexer (FMUX)
- ADCからの出力はECLレベル、8ビット×2チャンネルが255MHzで出てくる。これをそのまま扱う(例えばメモりに入れる)のは不可能で、ある程度の並列化(demultiplex)が必要となる。市販されている汎用のdemultiplexerは1ビットの信号を並列化するもので、この組み合わせで作ると厳しいタイミング部分が多く生じ、安定生産と安定動作が望めない。そこで、GaAsカスタムLSIで、同期のとれた並列化を行うこととした。
| 項目 | FDMUX | FMUX
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|---|
| Model | GHDK 4211 | GHDK 4212
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|---|
| Process technology | 0.5μm gate GaAs DCFL
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| Major Function | 1:16 DMUX x 4 | 16:1 MUX x 4
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|---|
| Number of gates | 〜1.5k gates | 〜1.7k gates
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|---|
| Max. Clock frequency | faster than 600MHz
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|---|
| Power supply | for TTL I/O: 3.3V Others : 2.0V
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|---|
| I/O Interface | PECL(Fast I/O)、LVTTL(Slow I/O)
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|---|
| Power consumption | 2.5W | 1.7W
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|---|
| Packaging | 136 pins ceramic QFP
FDMUX及びFMUXの諸元
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|---|
FDMUXは4ビットのPECL信号を16チャンネル8ビットのLVTTL信号にデマルチプレクスする。これを2個使用することにより、8ビットのECL信号を16チャンネル8ビットTTL信号にデマルチプレクス出来る。後段で出力信号タイミングを得るための信号出力(LVTTL=SLCK、PECL=SYNC0及びSYNC02)、クロックのバッファ出力を有している。
FMUXはちょうどFDMUXの逆の機能を持ち(当然中身は全く異なる)、16チャンネル8ビットのLVTTL信号を4ビットのPECL信号にマルチプレクスする。2個使用すれば16チャンネル8ビットのTTL信号を8ビットのECL信号にマルチプレクス出来る。
チップどうしを同期させるための回路が、FDMUXおよびFMUXに同等に入っている。通常FDMUXのうちの1つをマスタとし、残りのFDMUXおよびFMUXをその信号に同期させることができるが、逆にFMUX->FDMUXへの接続も可能な信号を用意している。
MAX101との組み合わせでは、ECLをPECLに変換する必要がある。また、MAX101が出力をA/B 2チャンネル有するので、FDMUXおよびFMUXはそれぞれ4個づつ必要となる。A/B各チャンネルは、MAX101から出たクロック信号(255MHz)に同期して、独立に動作する。
- メモリー及びALU
- FDMUXのデータ出力は16MHzなので、ここでは高速CMOSメモリーを使用できる(但しSRAM)。アクセススピード10ns程度のメモリーを使用すると、データ間隔が63ns間隔であり、この間に2アクセスはマージンを含めて楽々達成できる。メモリーは2列(表と裏、機械的配置にあらず)並列に用意する。
- 表と裏の同じアドレスにFDMUXからのデータを同時に書き込む
- 表のメモリーから(A)に相当するデータを、裏のメモリーから(B)に相当するデータを同時に読み出す。
- この2つのデータを後段のALUで処理し(引き算、ビットシフト)、FMUXに引き渡す
という手順を踏む。表と裏のアドレスの差が2タップフィルターの周波数を決め、表のアドレスと現在のアドレスの差が位相差と遅延時間を決める。但し、この方式では、遅延時間は64nsの倍数でしか変えることはできない。もっと細かい調整は、このブロックの後段で手動で行う。
ALUの機能は、
- 2つのデータの差をとる
- 1つのデータだけをthroughで通す
- 演算結果をビットシフトする
- データのラッチを行う
というもので、超高速FPGAを使い構成する。上記機能はVMEを通して切り替え出来る様になっている。
- DAC
- DACとしてはTriQuint社のTQ6122-Mを使用する。このDACは8ビットで約1GHzまで動作するらしい。データ入力はA/B2チャンネルあり、インタリーブでもシングルでも使用できるが、当然インタリーブで使用する。出力は単極なので、後段で0Vを中心としたバイポーラにした方が便利である。
- AddressコントロールとVMEインターフェース
- メモリーのアドレスコントロールは、FPGAで構成したアドレスコントローラーを通して行う。VMEインターフェースもFPGAで構成する。VMEアクセスは基本は16ビット特権データアクセス。32ビットアクセスでも動作するが、内部ピンスイッチでAMコードデコーダーを変える必要がある。
ベータトロン振動(横方向)
ベータトロン振動はバンチの周回に比べて十分早いのですが、1箇所で観測しているとその端数部分の振動しか見えませんから、適当なタップ位置を選べば、シンクロトロン振動の場合と同様に2タップフィルターを使ってキッカーまでの位相差の調整と1 turn delayを構成出来、フィードバックをする事が出来ます。但し、ベータトロン振動数によっては妙なtapを使わなければならなくなったり、gain marginが極端に少なくなったりすることがおこるのですが、この場合も適当に違う位置にモニターがあれば、モニターとキッカーの位置関係を変えてこれらの問題を容易に回避出来ます。
衝突型加速器にこの手法を適用する場合、次の問題があります。タップ位置が妙でなくても、最良でも実際は数turn離れたタップをフィードバック使用することになりますが、KEKBの様な、beam beam tune shiftが大きくなると思われている衝突型加速器では、このtune shiftにより、フィードバックループが複雑怪奇になり、理論上フィードバックが効かなくなる、あるいは不安定になるのではないかとおもわれています。
ベータトロン振動については、モニターを2箇所、適当(betatron phase advanceが90度に近いところ)に離して設置すれば、この2箇所の出力をうまく混ぜ合わせて必要な位相差を作り出せるので、あえて2 Tap FIR Filterを使わなければならない必然性はありません。DC成分についても、バンチごとのCODがそれほど異なるとは思えないし、たとえDC成分が残っていても、ADCのダイナミックレンジに入っていさえすれば、Trasverse amplifierやkickerはlongitudinal setに比べて余裕がありますから、大きな問題は無いと思っています。そこで、建設段階では上で述べた2 Tap FIR Filterをフィルターとしてではなく、1 turn delayとレベルシフタとして使用することとします。
7/Oct/97
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上記2タップFIRフィルターボードの前段だけ利用し、メモリー部分を強力に増設したものを製作します。フィルターボードは表のメモリーだけで1Mバイト程度のメモリーが乗っていますが、こちらはアクセスが書き込み1回だけなので、より低速で大容量のSRAMを使用します。5120バンチ全てのバンチに対して4096周分の位置データを記録すると、全部で20Mbyteのメモリーが必要となります。
本ボードの用途としては、
- Feedback on/offに伴うcoupled bunch oscillationの観測、振動モード解析
- バンチ毎の振動周波数の観測、チューンモニタ
- バンチ電流モニタ
を想定しています。
16/Aug/96
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横方向は、ストリップラインキッカーのシャントインピーダンスがベースバンドで最大となるので、D/Aから出たベースバンド信号をそのままキッカーに戻します。キッカーは45度傾いているので、Horizontalフィードバック信号とVerticalフィードバック信号を180度Hybridを使い合成して、必要な出力を作ります。
進行方向については、ビームローディングを避けるため、キッカーの中心周波数をRF周波数の逓倍から1/4倍RFほどずらします。実際にはcarrierとしては2.25*RF=1145 MHzを使用することになります。このままcarrierをAM変調すると、4回に1回しかビームと同期がとれないので、バンチ毎にcarrierの位相を90度シフトさせる、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)方式を使うことにします。
実際の回路は、現在製作中です。回路図を下図に示します。
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KEKBリングのlongitudinal radiation damping timeはHERで23ms、LERで46msです。transveseについてはこの約倍と考えられます。longitudinal方向については単バンチでのRobinson dampingが強力で、transverse方向ではhead-tail dampingが侮りがたい。しかし、現段階ではこれらのdampingを期待してフィードバック系を設計する/手を抜くのではなく、radiation dampingより早い不安定を全てfeedback systemで抑制できる様にパラメータを設定します。
現在設計者が把握している不安定源は以下の通りです。
横方向
- HERのFast Ion Instabilityによるもの
モード数10程度のところでτ〜1ms
- LERのPhoto electronによる不安定
半分以下のモードでτ〜0.5ms程度
- RF空洞のHOMによるもの
よくわからないところでτ〜5ms以上
- Resistive wall instability
低いところでτ〜1ms程度
進行方向
- RF空洞のHOMによるもの
τ>30ms(Radiation damping timeより遅い)
- Resistive wall instability
τ>100ms(十分遅い)
- Fundamental modeの残り τ〜20ms(merginal)
上の値は、1997年7月につくばで開かれたmultibunch instabilityのworkshopで出た値をもとにしており、現時点でそれなりに信頼性があるものと考えている。Fast ion instability(FII)は、TRISTAN-AR、大韓民国Pohang Light Source(PLS)およびアメリカ合衆国Advanced Light Source(ALS)で現象が確認され、確実に起こると思われる。Photo electron instability(PEI)はPFとIHEP/BEPCで現象が確認されているので、やはりKEKBでも必ず起こるだろう。だだし、どちらの現象にしても、理論予想と実験結果が良く一致しているという訳ではなく、むしろ個人的な感想では、理論予想はunder estimateになっているのではないかと恐れている。Longitudinal方向については、KEKBでLongitudinal feedback systemが必要となるかどうかは(特にHERは労多くして・・といった状況なので)、それこそmerginalなところだが、AR大電流実験の経験上、今の計算に乗らない不安定が起きたときのために、用意をしておいた方がよいと考える。ただ、弱いfeedback systemは何の役にも立たない可能性が大きいので、入れるからにはある程度使い物になるものにする、あるいは本格システムの大きさを推定しうる強度のものである必要があると考える。
以上から、フィードバックシステムの減衰時間は
- 横方向について、0.5ms程度
- 進行方向について、5ms程度
を目指す。実際には、ビームの様子を見ながら、フィードバックシステムの利得を変える(条件によりダイナミックに変えることも含む)ので、上の値はあまり意味があるとは言えない。
7/Oct/97
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横方向
フィードバックシステムによる減衰の時定数を、以下の式で推定する。
τx=2 (1/Vturn) T0(E/e) 1/sqrt(βmβk) xmax
ベータトロン関数をいずれも約10mと仮定すると、最大振幅1mmで減衰の時定数1msを達成するためには、このとき、HERでは16kV、LERでは7kVのキック電圧が必要となります。
ストリップライン型のキッカーのシャントインピーダンスは、
Rsh=2 ZL(g (l/b) sin(k l)/(k l))2
で与えられます。必要な周波数帯域は、LER、HER共に5kHz〜254.4MHzまでです。この帯域を、1種類のキッカー、1種類の増幅器で実現するのは現実的でありません。そこで、キッカー及び増幅器を2系統に分けることにします。
広帯域キッカーは、おおむね100kHz〜260MHzまでを担当します。長さ30、40、50cmのストリップラインキッカーで、ギャップ全幅70.4mm、構造因子0.9とすると、Shunt impedanceは下図のようになりました。
これから、長さ40cmのものが、必要な帯域において十分なシャントインピーダンスを有することが分かりました。100MHz位の周波数に対して、シャントインピーダンスは8kΩ程度となっています。ストリップライン一本あたりに最大250Wのパワーを入れることができると、フィードバック電圧は水平あるいは鉛直に最大2.8kV/turnとなります。この場合、フィードバックアンプが飽和する振幅はLERで0.2mm、HERでは0.09mmとなります。
低域キッカーはおおむね5kHzから400kHz程度までを担当します。この帯域は、resistive wall不安定を抑制するために、強力なキッカーが必要となります。長さ1.2m、ギャップ全幅62mm、構造因子0.9とすると、shunt impedanceは下図の様になります。
![[shunt impedance of a transvese low frequency kicker]](ler-rod.gif)
1MHz以下では、120kΩ程度のshunt impedanceを期待します。45度対向電極構成で、電極1本あたりに最大200W入れると、フィードバック電圧は水平あるいは鉛直に最大6.9kV/turnとなります。フィードバックアンプが飽和する振幅は、LERで0.7mm、HERで0.3mmとなります。
進行方向については、フィードバックシステムによる減衰の時定数を以下の式で推定します。
τe=2 (1/Vkick)T0(ΔE/e)
扱う最大エネルギー振幅を0.1%とし、減衰時間10msが必要なとき、HERでは16kV/turn、LERでは7kV/turnのキック電圧が必要となります。これが達成できるかは、キッカーのシャントインピーダンスとパワーアンプのパワーによりますが、現在開発中のDAΦNEタイプのキッカーを現実的な構成で使用すると、実現性は薄いと言わざるを得ません。もしもシンクロトロン振動の振幅がそれほど大きくなく、かつ不安定の成長時間もそれほど早くないなら、bang-bang-dampingで押さえられる可能性もあり、これに期待しています。
7/Oct/97
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フィードバック用最終段増幅器の仕様は以下の通りです。
全ての増幅器に適用する仕様
- 回路構成:A級、あるいは十分深いAB級構成。これは、(1)入射時などの大きく出力が変化する場合に十分なパルス応答を確保するため、(2)増幅器による歪みの混入を避けるため、必要である。
- 使用素子:固体素子のみ。真空管(四極管、進行波管等)は使用してはならない。これは(1)長期使用時での信頼性を確保すること、(2)異常動作時(負荷異常に伴う過大反射時など)に対する耐性を確保するため、(3)故障時の迅速な修理の実現、(4)標準的な回路構成で広帯域性を確保するため、必要である。
- 遠隔制御:進行波、反射波のモニタ、インターロック状態のモニタに加えて、主電源の入切を含む制御が遠隔で行えること。これは、設置場所が運転時立ち入り禁止区域にあたり、遠隔制御なしでは順調な運転、調整が行えないからである。
- 入出力インピーダンス:全て50Ω。入力、負荷とも50Ω構成になっている。
- Machine torelance:信号源の振幅および位相がいかなる状態であっても、また同時に負荷のインピーダンスがいかなるものであっても、故障あるいは発振なしに動作すること。これに伴う動作警告を発することは(運転を阻止しない限り)かまわない。
- 電源:基本的に単相200V、50Hzで動作すること。
- 技術サポート:故障時に迅速に対応出来ること。
- 横方向用広帯域増幅器
- 帯域:10kHz〜250MHz
- 最大出力:250W以上
- 利得:54dB以上
- gain flatness:+-1.5dB以内
- 横方向用低周波増幅器
- 帯域:5kHz〜400kHz
- 最大出力:200W以上
- 利得:53dB以上
- gain flatness:+-2dB以内
- 進行方向用増幅器
- 帯域:890MHz〜1145MHz
- 最大出力:125W以上×4台で1セット
- 利得:52dB以上
- gain flatness:+-2dB以内
今年度及び来年度でこれらの増幅器を調達します。調達計画の詳細については、必要ならば担当者に問い合わせて下さい。
イタリアFrascatiのDAΦNEで開発された、waveguide overloaded cavityをKEKB用に変更したものを使用します。DAFNEのご厚意で図面をもらい、それをもとに以下の変更を行いました。
- 中心周波数の変更。DAΦNEの場合はRF周波数368.32MHzの3.25倍の1197MHzが中心周波数ですが、KEKBの場合、508.887MHzの2.25倍の1145MHzとします。このため、約50MHz周波数を下げるよう、空洞のr方向の構造を比例して大きくしました。
- Quality factorの調整。DAΦNEの場合、Q値が6.5程度ですが、KEKBの場合、最小バンチ間隔が2nsなので、理想的には4.5程度のQ値を達成する必要があります。もちろん、Q値をさげると、シャントインピーダンスもどんどん下がってしまいますので、どこかで妥協が必要です。DAΦNE空洞は3入力、3出力構造ですが、このwaveguide部分をいじっても大して御利益がなかったので、入力出力とも1ポート増やし、そのままではQが(シャントインピーダンスも)下がりすぎるので、waveguideの構造を調整しました。
- パワーハンドリングの検討。アンプ保護のため、サーキュレーターを使用する必要がありますが、これの耐圧が通常製作可能な範囲に入るよう、システム構成を検討しました。
構造に関わる部分は、まずHFSSを使い周波数、Q値を最適化しました。その後、MAFIAのT3モジュールを使い、Q値、シャントインピーダンスの確認及びポート出力波形の検討を行いました。
参考文献
横方向キッカーは、通常のストリップライン型電極を用いる予定です。10章で述べたように、低域用と高域用に分けます。
低周波用キッカー
電極部の長さ1.2mの、ロッドを45度対向とした形とします。これは、1.2mの板を支えるのが困難であるとともに、もし万が一熱などによりロッドが膨張したときの対策がたてやすいからです。1.2mのロッドも、中間支えなしでは垂れてしまいますので、中間でセラミックスのサポートを入れます。
![[image of a low frequency kicker]](her-tkls.gif)
![[image of a wideband kicer]](ler-tkls.gif)
の様な構造をしています。
ワイドバンド用キッカー
電極部の長さ0.4mの、60度の見込み角の板を45度対向させて使用します。AR南衝突点東側に入れた物と同様な形状です。中間の支えは使いません。
![[image of a wideband kicer]](her-tkws.gif)
![[image of a wideband kicer]](ler-tkws.gif)
のような構造をしています。
真空チェンバー内のアパーチャーは、次の様になっています。

9/Oct/97
進行方向位置検出で、位相を求めるためにはバンチの持つnωRF成分を、それと90度位相のずれた基準信号とのかけ算で求めましたが、これを同相でのかけ算とすると、
Acos(nωRFt+Φsin(ωst))×cos(nωRF)
=1/2A(cos(2nωRFt+Φsin(ωst)) ・・・高周波成分
+ cos(Φsin(ωst)) ) ・・・DC成分
となり、これを低域濾波器を通してDC成分だけを取り出すと、
1/2A cos(Φsin(ωst))〜1/2 A
と、目標バンチのnωRF成分の大きさとなります。
もしもバンチ長がこの周波数より十分短かければこの値はバンチ電流に比例し、DCCTの値から係数を補正すれば、バンチ電流の値を求めることができます。実際には、
- DBM、low level amplifierの非線形性
- RFビームローディングによるバンチ毎の平衡位相のずれ、バンチ電流による変化
といった問題があり、たとえ8ビットのFADCでデータを取っても48dBのダイナミックレンジは保証できません。DBMが理想的であるとして、バンチギャップによる平衡位相のずれが数度(508.8MHzに対して5度〜27psとする)あると、2.5GHzで検波では最悪出力は10%低くなってしまいます。これから通常運転状態でおおむね15%程度の誤差がでると予想します。主な使用目的は入射時のバンチ電流管理ですから、この程度で許して下さい。
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KEKBのコントロールは、原則として全てEPICSで行う事となっています。フィードバック関連で、コントロールに関係するものは
- 2タップフィルター、自作VME、A24 or A32アクセス、メモリー(1M)、IRQなしの予定、デバイスサポートなし。
- メモリーボード、自作VME、A24 or A32アクセス、メモリー(20M)、IRQなしの予定、デバイスサポートなし。
- TD4V、自作VME、A24 or A32アクセス、IRQなし、デバイスサポートあり。
- アンプコントロール、自作VME、A24 or A32アクセス、IRQなし、デバイスサポートなし。
- low level制御I/O、多分既成VMEI/O、デバイスサポートなし。
- 温度監視レコーダー、GP-IB、デバイスサポート(不完全ながら)あり。
- 温度監視DMM、GP-IB、デバイスサポートなし。
- ディジタイジングオシロスコープ、GP-IBあるいは直接Ethernet、デバイスサポートなし。
- スペクトラムアナライザ、GP-IB、デバイスサポートなし。
等です。EPICSであるデバイスをコントロールするためには、
- デバイスの動作を規定する、デバイスサポート。Vx-Works上の呪われた低レベルもろCプログラム。
- EPICSデータベース。実際のデバイスに対応するデータベースが必要。
- シーケンサー。これは、シーケンス動作をしないなら不要。
- ユーザーインターフェース。
を全部自分で用意する必要があります。このうち、加速器operatorが使用するユーザーインターフェースは「こみっしょにんぐ ぐるーぷ」殿が作られる様ですが、自分で使うためにも、何らかの(不細工でも)インターフェースは必須です。
フィードバックは、こんなにマンパワーが無いにもかかわらず、大胆な極みにも多くのVMEデバイスを自作して使ってしまいますので、なんとかして上記ソフトウエアを作らなければなりません。さらに、EPICSには現在のところ、大容量メモリー(とはいってもたった20MBでも)を扱う標準的手法がないので、メモリーボードで取った結果の解析等には外部プログラムを多用する必要があります。現在のソフトウエア開発状況を外挿すると(ほとんどなにもやってないから)commissioning時に色々なデバイスがEPICSでコントロール出来るかどうか、まさに予断を許さない状況です。それでは困るという方は、どうぞお手をお貸しください(と、すでに開き直っている)。
大電流實験は次の参期にわかれて実施され、めでたい極みにもすべて終了しました。
- 第壱期:28/Mar/96〜2/Apr/96
この期間は超伝導空洞の試験の専用期間である。APS 44セルとSCC 1台(+ARES-A detune)の構成。
- 第弐期:1/Jul/96〜22/Jul/96
APS空洞を全てラインからはずし、SCC 1台orARES-A(East station)とARES-A(West station)で実験を行った。
- 第参期:17/Oct/96〜2/Dec/96
西ステーションにARES-九五式とARES-九六式がいよいよ鎮座ましまし、實験はついに猖獗を極めた。フィードバック実験においても、システムがそろい、一応全ての方向についてのフィードバック実験を行った。
今までの實験の赫々たる結果については、例えばPAC97のプロシーディングスに多くの発表があります。例えば、KEK Preprint 97-62 High Beam Current Experiments for the KEKB Conducted at teh TRISTAN Accumulation Ring by Y.Funakoshi and K.Akaiを参照して下さい。
フィードバック実験
第1期
フィードバックの実験は行えなかった。
第2期
目標は大それたことに次の通りであった。
- 2タップフィルター第1号の特性試験を行い、2号機以降にフィードバックするデータを集める。
- 2タップフィルターを使い、4ns程度の進行方向バンチフィードバックを行い、多バンチモードでのビーム不安定抑制を試みる(但し不安定が起きたとき)
- 横方向アナログフィードバックループを閉じて、横方向フィードバックを試みる。(optional)
ありがたいことに計3シフトの時間を割いていただき実験を行った。
ビームの状況
進行方向には、単バンチ極少電流からシンクロトロン振動が起きていた。多バンチでも当然巨大なシンクロトロン振動が起きていた。横方向については、バンチトレインとしたとき、巨大な水平方向のベータトロン振動が起き、ビームを失う状態。鉛直方向は、あまり振動は観測されなかった。
FB実験結果
2タップフィルターのALUより後段に重大な問題が生じたので、フィルターとしての使用は断念した。ただ、メモリーまでにの部分は一応良好に動作したので、メモリーボードとして使用した。単バンチ、均等数バンチ、バンチトレインでデータを蓄積し、振動の様子を観測した。
バンチトレイン蓄積時に巨大な水平方向ベータトロン振動が発生しており、かつトレイン後方に行くほど振幅が増大していることをメモリーボードを使用して発見したので、これを抑制するためアナログ水平フィードバックを急遽組み立て、テストをした。機材(というよりdelay cable)の都合で、低い周波数帯域(25MHz以下)の物だけを生かした。
4ns間隔バンチトレイン(bunch current 2mA)で、フィードバックなしだと11バンチしか積めなかった物が、フィードバックを用いることにより40バンチ以上も安定に蓄積できた。
第2期の自己評価
フィルターシステムは半分しかテスト出来なかったが、問題点等の把握は十分に出来た。進行方向フィードバックは今回は全く試せなかった。横方向については、予想通りインチキアナログシステムですらちゃんと働くことが分かった。
ということで、一応勝ち越し(8勝7敗程度)。来場所に期待する。
第3期
目標は以下の通りでした。
- Longitudinal Feedbackを行う
- 2 Tap FIR Filterシステムを3系統(進行方向、横方向)すべて生かし、フィードバックシステム運転上の問題点を探る
- 進行方向用キッカーの特性を測り、本番用の選択の決断が出来るデータを集める
- フィードバックOn/Offに伴う振動の様子を観測し、不安定源を探る
この部分の報告は、以下の論文を参照して下さい。リンクについてはいずれもPDFフォーマットで、アクロバットリーダーが必要です。
Submitted to the 1997 Particle Accelerator Conference (PAC97), TRIUMF, Vancouver, BC, Canada
- Study of Bunch by Bunch Feedback Systems in TRISTAN-AR, M. Tobiyama and E. Kikutani, KEK Preprint 97-13
- Strategy for Developing Fast Bunch Feedback Systems for KEKB, KEK Prepint 97-14, E. Kikutani and M. Tobiyama
- Experimental Observations of the Ion-releated Coupled Bunch Instability ina Bunch Train in TRISTAN AR, H. Fukuma et al.
- Experimental Study of the Ion Trapping Phenomenon in TRISTAN AR, S. Matsumoto et al, KEK Preprint 97-32.
Submitted to the Multibunch Instability Workshop (MBI97), KEK
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フィードバックシステムは、富士実験室のビームクロスポイント付近に設置します。次図に富士クロスポイント付近の配置を示します。

LERは反時計回りに、リング外側を走っていたものが内側になります。クロスする場所では、鉛直偏向電磁石を使い上に約8cmほど上がり、HERと交差し、また下がってもとのビームラインレベルになります。交差点の前後の直線部にはAERS空洞が鎮座まします予定です。HERは上下にはビームラインレベルは変わりませんが、水平偏向電磁石を使い、ビームを横に振り、LERと交差します。フィードバック機器は、LERについては交差点を中心としてほぼ対称に、HERについては偏向電磁石の上流直線部の大半を使って設置します。
LER上流側(リング外側からみて左側)、QV2PとQV3Pとの間に横方向キッカーを設置します。ここでは真空チェンバーの内径は(キッカーによりアパーチャーが減ること除けば)変化しません。この下流、鉛直偏向電磁石BV2Pの前でチェンバーをφ64に絞り、振動検出用電極を置きます。電極は水平に4対、鉛直に4対、45度方向のものが4つの計20個あります。ここからクロスが終わるまでは、内径64のままです。下流側BV2P.2の下流に、もう1台の振動検出用電極チェンバーをおきます。電極数は20で構造は上流側のもののクロスポイントに対して鏡像対称です。この後ろで再びφ94まで膨らませます。なお、計算上は鉛直偏向電磁石からのSRはチェンバーに当たらない予定ですが、念のためテーパー部には上下に冷却チャンネルをつけてあります。QV3P.2とQV2P.2の間は進行方向キッカーの設置場所です。commissioning時には、出来れば2台のキッカーを設置しておきたいと思います。キッカーの内径はφ110なので、この付近のチェンバーは、ダミーを含めてφ110となっています。
HERは反時計回りに進みます(リング外側からみて右側が上流です)。positron入射点の近く、QM4Eを出たところで、チェンバーをレーストラックからφ104の丸に変換します(鉛直方向に膨らませる)。その下流に横方向キッカーを設置します。その後、テーパーでφ64まで絞り、QM3E付近で振動検出電極チェンバーにつなぎます。電極数はLERと同じ、20個です。ここからQX6E.2を出るまで、チェンバー内径はφ64のままです。QX7E.2の下流、ほとんどQX6E.2の付近にもう一台の振動検出チェンバーがあります。構造は上流のものと同じです。その下流、QX6E.2を出たところでφ110まで大きくします。ここはcommissioning時はなにも入っていませんが、将来的に進行方向キッカーを入れる予定です。その後、レーストラックに変換して、横方向クロスへ向かいます。
ケーブル配線
LER位置モニター系、40本
| チェンバーから足下 | S04272Bケーブル | 2m | -1dB
|
| 足下から架橋穴 | 8D高発泡ケーブル | 3.6m |
|
| 架橋穴から制御室 | 8D高発泡ケーブル | 22m |
|
| 制御室内引き回し | 8D高発泡ケーブル | 10m | 計-5dB
|
| 全減衰量 | | | -6dB/2GHz
|
LER横方向キッカー、φ18mm×16本
| 給電電極から穴 | 10D高発泡ケーブル | 8m |
|
| 架橋上下 | 10D高発泡ケーブル | 4m |
|
| アンプ周り取り回し | 10D高発泡ケーブル | 2m |
|
| 全減衰量 | | | -0.7dB/500M
|
LER進行方向キッカー、φ30mm×8本
| 給電電極から足下サーキュレーター | 10D高発泡 | 2m | -0.15dB
|
| サーキュレーターから架橋下、アンプまで | HF 7/8 CuH | 16m | -0.6dB
|
| 全減衰量 | | | -0.75dB/1GHz
|
HER位置モニター系、40本
| チェンバーから足下 | S04272Bケーブル | 2m | -1dB
|
| 足下から架橋穴 | 8D高発泡ケーブル | 60m |
|
| 架橋穴から制御室 | 8D高発泡ケーブル | 4m |
|
| 制御室内引き回し | 8D高発泡ケーブル | 10m | 計-14dB
|
| 全減衰量 | | | -15dB/2GHz
|
HER横方向キッカー、φ18mm×16本
| 給電電極から穴 | 10D高発泡ケーブル | 80m |
|
| 架橋上下 | 10D高発泡ケーブル | 4m |
|
| アンプ周り取り回し | 10D高発泡ケーブル | 2m |
|
| 全減衰量 | | | -4.3dB/500M
|
HER進行方向キッカー、φ30mm×?本
| 給電電極から足下サーキュレーター | 10D高発泡 | 2m | -0.15dB
|
| サーキュレーターから架橋下、アンプまで | HF 7/8 CuH | 20m | -0.75dB
|
| 全減衰量 | | | -0.9dB/1GHz
|
制御室は、富士実験室のB4レベルの3部屋を使用します。
この3つの制御室には、加速器運転中であっても出入り出来るようになっています。パワーアンプは全てビーム架橋の下に入れる予定です。アンプがある場所には加速器運転中には入れません。
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M.Tobiyama
9/Oct/97
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